討議型授業(合意形成型授業)について

 討議型授業(合意形成型授業:以下略)について、かなり主観の入った感じですが、説明します。

 

 討議型授業はモラルジレンマ授業のオルタナティブとして提案されました。モラルジレンマ授業には、(たぶん大きくは)以下の2点の批判がなされています。

 

1、なぜAかBかという2択なのか。

 たとえば、ハインツのジレンマであれば、なぜ妻の薬を手に入れ、かつ盗みをしない「常識的な」発想をさせないのか。

 

2、なぜ道徳性を個人のものとして捉えるのか。

 モラルジレンマ授業は、発達段階的に道徳性が向上するという前提のもとで授業をします。コールバーグという偉い人が道徳性の発達を六段階にまとめました(参照:心理学COCOROの法則: 001117)コールバーグの道徳性発達の6段階 アーカイブ)。モラルジレンマの授業は話し合いを通して各人の道徳性を向上させることを目的にします。では、なぜ道徳という社会的なものを、個人の性質として捉えるのでしょうか。例えば、「嘘をついてはいけない」という道徳は、もちろん状況によりますが、私たちの多くに共有されている道徳です。つまり、道徳は社会的事実でもあるわけです。したがって、「社会的な事実としての道徳ー個人」という関係で道徳性を捉えなければならないのではないか、という疑問が生じたのです。

 

 モラルジレンマ授業のオルタナティブとして提案された討議型授業は、以下のような特徴を持っています。

 

1、オープンエンドではなく、クローズエンド

 つまり、意見を言い合って終わるのではなく、合意を形成して授業を終えます。

 

2、話し合いによる合意形成によって、学級集団の「規範構造」を変えていく。

  話し合いによる合意によって、学級の規範を子どもたちの誰もが認める妥当なものに変えていくということです。つまり、学級の子どもたちによる話し合いによって、学級の規範が学級の子どもたち全てにとって妥当なものに編みかえられ、 そして子どもたちはその学級の規範を守る。道徳性を「社会的事実としての道徳ー個人」のダイナミックな関係によって捉えているのです。

 

 渡邊満という学者さんが、討議型授業を以下のようにモデル化しています。

 

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<授業の流れ>
 必ずしも一時間扱いに否定的ではないが、話し合いを深めるために二時間扱いとして構想する。第一次では、資料を提示し、主人公の直面している課題状況を把握した上で、一人ひとりが「どうすべきか」という葛藤課題に取り組む。その際、「今日解決したい問題は何か。」を確認し、その上で「根拠を明確にした判断」を行うのであるが、学年によっては明確な根拠(理由)をグループで考え合うことで全体での討議がしやすくなるのであろう。最終的に一人ひとりの判断と根拠を決め、道徳学習ノートに書く。
 第二次では、まず話し合いのルールを確認し、「みんなが納得できるクラスをつくる」のだということを合わせて確認する。その上で、前時の葛藤課題と自分の判断と理由を確認する。その際、考えが変わった場合には、理由をはっきり述べることで、判断を変えてもよいことを児童に説明しておく。
 あらかじめ前時に児童が行った判断とその理由を短冊に書いておき、それらを黒板に張っておく。それに従って、納得のできるものかどうかを話し合いの中心におくことが必要である。その際、結果を考えることが具体的に考える手がかりとなる。すでに出ている数多くの理由を絞り込んでいき、「どうすべきか」を決めていくことが話し合いの具体的な活動になる。
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 以上、かなり粗い説明になってしまいましたが、討議型授業を説明しました。実践はモラルジレンマ授業で使われている資料を(たぶん、おそらく)そのまま使ってもいいんじゃないでしょうか。